イギリスの片田舎に産まれ、子どもの頃から、典型的なイジメられっ子。大人になっても、冴えないままのケータイ電話販売員。彼の名はポール・ポッツ。シャイで謙虚、自信の欠片も持てずにきた彼の、誰にも言えない夢は「オペラ歌手」になること。
 そんな彼にも、生まれて初めてガールフレンドが出来る。誰も信じてくれない自分の無謀な<夢>を、まっすぐな瞳で信じ応援してくれる恋人ジュルズの存在に背中を押され、かねてからの夢だったヴェネチアのオペラ学校へと留学を決意するポール。遂に、憧れのパヴァロッティの前で歌う機会を得るが、「君は一生オペラ歌手にはなれない」と一蹴され、すっかり自信を喪失する。
 失意のどん底で帰国し、すっかり意気消沈してしまったポールに、更に追い打ちをかけるように不運の連続攻撃が始まる。愛するジュルズとの結婚式の後、やっと出演が決まった「アイーダ」の舞台で倒れたポールに、甲状腺の腫瘍が見つかる。やっと歌声が戻ったその日に車にぶつかり、鎖骨と肋骨を骨折する。
 18カ月後、退院したポールは、入院費で破たんした家計のために再び携帯ショップで働き始める。ネットでオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」の広告を見つけたのは、完全に歌を諦めようとした時だった。ジュルズに背中を押されて応募したポールは、これが最後のチャンスだと決意する。くじけそうな勇気を奮い立たせ、上がった最後の舞台、オーディション番組。緊張に体が震え、何度も逃げ出したくなるポール。ステージか非常口か─  迷うポールに、運命を分けるメールが届く─。